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ドローン事故で人が負傷したら何をする?航空法132条の90と負傷者救護を現場目線で解説

ドローンが人に接触した。
機体が落下して、第三者が負傷した。

その瞬間に問われるのは、知識の量よりも、まず何を先にやるかです。
119番通報はもちろん重要です。けれど、それだけで対応が終わるわけではありません。

航空法132条の90は、無人航空機の事故時に、直ちに飛行を中止し、負傷者を救護し、さらにその他の危険を防止するために必要な措置を講じることを求めています。つまり、法律の構造としても、現場の実務としても、通報は入口であってゴールではないということです。

この記事では、航空法132条の90の考え方を踏まえながら、事故直後の現場で何を優先すべきか、そしてどのような負傷を想定しておくべきかを、実務の順番で整理します。

航空法132条の90が求めていること

この条文が示していることは、実はそこまで複雑ではありません。
骨格は、飛行中止、負傷者救護、危険防止措置の3つです。

まず、飛行を直ちに中止すること。
機体がまだ稼働しているなら、最初にやるべきは停止です。飛ばしたままでは、負傷者対応にも周囲の安全確保にも移れません。

次に、負傷者を救護すること。
ここでいう救護は、難しい医療行為を意味しているわけではありません。ただ、少なくとも「通報だけして待つ」で常に足りるとは言えません。

そして、その他の危険を防止するために必要な措置を講じること。
事故後の現場には、負傷者への対応とは別に、落下した機体、損傷したバッテリー、近づいてくる第三者、車両や通行人など、いくつもの二次リスクが同時に生まれます。

大事なのは、負傷者対応と危険防止が別々に置かれていることです。
けが人への対応に意識が向きすぎて、墜落機体や周囲の危険への対応が抜ける。これは現場では十分に起こり得ます。法律は、そこまで含めて対応を求めています。

なぜ119番だけでは足りないのか

国土交通省の事故・重大インシデント等の報告要領では、事故が起きた場合、救急車や医師が到着するまでの間に、可能な応急救護処置を行うことが具体例として示されています。つまり、119番通報は大切ですが、それだけで常に十分とは限りません。

たとえば、出血が続いている人が目の前にいるのに、通報だけして何もしないのか。
あるいは、手袋や清潔な布を使ってまず圧迫し、救急隊へ引き継ぐまでの時間をつなぐのか。
この違いは、現場では決して小さくありません。

もちろん、自分が二次災害に巻き込まれるような無理な行動は避けるべきです。
けれど、だからといって「通報したから終わり」と切ってしまうのも違う。必要なのは、その場で実行可能な初動です。

ドローン事故で起こり得る主な負傷と、初動で見るべきポイント

ここから先は、もう少し現場寄りの話です。
ドローン事故で人が負傷した場合、まず大切なのは、何が起きているかを大きく見誤らないことです。

現場で想定しておきたいのは、出血、熱傷、整形外傷、打撲、そして熱中症あたりです。
どれも、最初の見方を間違えると、その後の対応がぶれやすくなります。

出血

プロペラ接触や機体・機材との衝突では、まず出血の有無を見ます。
出血が続いているなら、救急要請と並行して止血を優先する場面があります。逆に、見た目の出血が多くなくても、傷の深さや部位によっては軽く見てよいとは限りません。

現場で大切なのは、完璧に判断することではなく、出血があるなら止血を意識することです。
迷っている時間の方が、かえって危ないことがあります。

熱傷

バッテリーや機材トラブルでは、熱傷の可能性もあります。
この場合は、負傷者だけでなく、周囲の危険も同時に見なければいけません。熱源や発火リスクが残っているなら、救護と危険防止措置は切り分けられません。

つまり、熱傷の場面では「けがの対応」と「現場の安全確保」がほぼ同時に走ります。
ここがドローン現場らしい難しさでもあります。

整形外傷

転倒や落下物によって、手足や肩、体幹を痛めることもあります。
痛みの強い部位がある、動かしにくい、立ち上がれない。そういう場合は、無理に歩かせる、立たせる、動かすと悪化することがあります。

この種の負傷は、派手な出血がないぶん、つい軽く見てしまいがちです。
でも、現場ではむしろ「動かさない判断」の方が大切になることがあります。

打撲・頭部打撲

頭を打っている場合は、見た目だけで軽いと判断しないことが大切です。
受傷直後に普通に会話できていても、その後の変化を見る必要がある場面があります。

打撲は「たぶん大丈夫だろう」で流されやすい負傷です。
ただ、頭部打撲が疑われるなら、受傷の状況やその後の様子をきちんと引き継げるようにしておくことが重要です。

熱中症

夏場や炎天下の現場では、事故とは別に熱中症が重なることがあります。
そして厄介なのは、事故対応に意識が向きすぎると、本人や周囲の作業者の体調変化が見えにくくなることです。

ドローンの現場は、屋外、直射日光、待機時間、緊張、装備負担が重なりやすい。
だから熱中症は、事故とは別枠の話ではなく、現実的な現場リスクとして見ておいた方がいいと思います。

ここで必要なのは、完璧な診断ではありません。
何が起きている可能性が高いかを外さず、優先順位を崩さず、救急隊へ引き継ぐまでの初動をつなぐことです。

なぜ現場で手が止まるのか

事故対応がうまくいかない理由は、知識不足だけではありません。
むしろ多いのは、順番と役割が決まっていないことです。

何から始めるのかが曖昧。
誰が通報し、誰が負傷者を見て、誰が周囲を制御するのかが決まっていない。
飛行前のリスク想定はしていても、事故後の初動だけが具体化されていない。

この状態だと、現場ではかなりの確率でパニックが発生します。
声かけが遅れる。役割が重なる。あるいは、全員がお互いを見てしまって、誰も動かない。これは特別な失敗ではありません。準備がなければ普通に起こります。

しかも、この課題は操縦者だけのものでもありません。
補助者、現場責任者、安全担当者、発注者側の管理者。立場は違っても、事故直後の数分に関わる人は少なくありません。

だから必要なのは、事故後にうまく説明することではなく、事故直後に動ける状態を作っておくことです。

ドローン現場では、初動対応を別に準備しておいた方がいい

一般的な救命講習や応急手当講習は、もちろん大切です。
ただ、ドローンの現場には独特の事情があります。

機体がまだ稼働しているかもしれない。
プロペラやバッテリーの危険が残っている。
撮影、点検、測量など、現場条件によって状況もかなり違う。
そのうえ、一人で複数の判断を同時に背負う場面もあります。

こうなると、「止血を知っている」だけでは足りません。
飛行停止、周囲への声かけ、通報、止血、観察、救急隊への引き継ぎ。これらを、ばらばらの知識ではなく、一連の流れとして持っておく必要があります。

知識と、身体が動く準備は別物です。
ここは少し厳しい現実ですが、現場ではその差がそのまま出ます。

まとめ

ドローン事故で人が負傷したときに必要なのは、難しい理屈より、まず順番です。
飛行を止める。
負傷者を確認する。
必要に応じて救急要請を行う。
可能な範囲で応急手当を行う。
そして、二次事故のリスクを下げる。

航空法132条の90は、その基本線を示しています。
そして現場では、その基本線を本当に実行できるかどうかが問われます。

飛ばせることと、事故後に対応できることは、同じではありません。
その差を埋める準備まで含めて、運航体制です。

DOSA千葉校のDECでは、こうした事故直後の初動を実際に指導することができます。
まずは短時間で入口をつかみたい方にはドローン応急手当体験(DEC Intro)講習、体系的にしっかり学びたい方にはドローン応急手当(DEC)講習を推奨いたします。

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